最近、新たに認識したことのひとつは、1930年代において大艦巨砲主義は古いといわれつつも、日本だけでなく各国も戦艦をつくりまくっていたということですが、1922年のワシントン条約で八・八艦隊が不可能になった後、日本の造船業界は大和建造前に約15年間もブランクがあったというんですね。あと、石川信吾というのは相当なワルですね。石川信吾はアメリカはパナマ運河を通行できないような戦艦は2隻つくれないから、大和一隻を日本がつくったら勝ちになるというデマゴギーで建造させたというんですが、よくこんな主張が通ったな、と。もっとも、造船業界の巨大利権もからでのことなんでしょうが。その関係で、隅田川にかかっている清洲橋、白髭橋、かちどき橋、両国橋、蔵前橋などは造船業の不況対策だったというのも知りませんでした。米軍は時代遅れになったとはいえ、戦艦を上陸前の艦砲射撃には使えるという形で有効利用の道を探っていったのに対し、日本はただひたすらに隠したというか、エアコン完備の大和ホテルとしての使い途しか考えなかった、というのもなんなのかな、と。
零戦がダントツに優れていたのはその航続距離と低速での運動性能だといいますが、これが海軍の無謀な戦略を誘発したというのも面白い指摘だなと思いまし、「どんなジャンルであれ、世界一のものをつくりあげたという記憶を持っている国はそう多くはありません。やはり大和、零戦は日本国民が誇るべき歴史的な記憶だと思います」という結びは納得できました。
そろそろ戦艦大和オタクは、お仕舞いにしない?おすすめ度
★★★★★
「戦艦大和」って、いまも日本人のロマンだけれど、その実、戦略的にも、建造技術的にも、とんだ駄作だったことは余り知られてない。
何せ40kmも彼方の目標を狙うとなると、精密機械の大砲といえども僅かな確率でしか砲弾が命中しない。それこそ100発撃っても内1、2発が中々当たらないのだ。距離1万m程度までなら腰溜めにぶっ放しても敵艦船の横っ腹に当たるが、それより遠くなると放物線を描くように空に向かって砲弾を打上げ、投網で魚群を包込むように落下する砲弾群で標的を捉え撃沈することになる。が、これが命中しない。運良く当たることもあるが、さまざまの要因で誤差が必ず生ずるので、40km先だと幅5〜6百m、奥行き1.5km以上もの範囲に砲弾がランダムに散らばってしまう。これでは命中は僥倖に近い。もちろん優秀な帝国海軍は承知のうえ。どうするのか。18インチ砲戦艦4隻がセットになって9門×4隻=36発の砲弾を同一目標にぶち込んでやる。これで砲弾の密度を高め命中率を上げるという計算だった。八八艦隊プランは、この考え方から来ている。これぞ大艦巨砲主義の真髄。
ところが大和設計にさいして戦略方針が変ってきた。航空機と潜水艦の発達で、敵味方艦隊の交戦距離が100kmあたりまで伸びてきた。どう100km先の敵と渡合うか。敵艦隊を見てから砲撃に掛かる日本海海戦やジェトランド半島沖海戦のようなわけには行かない。そこで出てきたのが航空母艦と戦艦を1組にし、あらかじめ目玉を持った砲弾というべき艦載機で敵艦に打撃を与えておいてのち、おもむろに戦艦が近寄って大砲で撃沈するという算段だ。大和の設計でもっとも議論が集中したのは速力の問題、できれば空母並みに33ノット、絶対に30ノット以上。しかしエンジンが巨大化すると重量を取られる装甲部(バイタルパート)は絞るしかない。この矛盾を解決するには設計のコンセプトをガラっと替える必要があった。なのに、あたまの硬い首脳陣は、結局、26ノットで十分だと押切ってしまった。これでも16インチ砲8門24.5ノットの長門、陸奥と組めば使えるという。
斯くして大きくて見栄えが良いという以外、何の取柄もない戦艦2隻ができあがってしまった。
空母6隻をひと纏めにして運用する「機動部隊」が、実は大和、武蔵が戦力にならないと見越した苦肉の策なら、太平洋戦争中、もっとも活躍した戦艦群が、いちばん古い主砲14インチ8門の金剛、比叡、榛名、霧島だったというのも、これら元巡洋戦艦の4隻は30ノットの速力を持ち、空母と一緒に行動できたからだ。戦艦2隻とセットで建造された空母・端鶴、祥鶴は、ご存知のとおり、大和、武蔵を置いてき放りにして太平洋狭しと大活躍。
航空機の攻撃に対抗できないので戦艦が使いものにならなくなったのではなく、設計のとき既に航空機時代への対応を放擲していたのが真実。良く言えば堅実といえようが、長門、陸奥以来20年ぶりの建艦なのに、きわめて守旧的な設計だった。
海軍の軍艦設計者だった福井静夫さんなど、もっと辛辣で、戦艦が優秀な人材を独占したままアヒルのように浮かんでいたため、ほんとうに戦争に必要な他の艦船に人が廻らなかった。あんなもの、こちらの手で沈めてやりたいくらいだったとまで厳しいことを言っていた。
まさに夢のコラボです。
おすすめ度 ★★★★★
わたくしめもついに買いましたよ
。とにかくこれは絶対買いだ!
買って良かったと思います。