お役人様に捧げる,笑いと涙の感動作おすすめ度
★★★★★
「歓喜の歌」という映画ですから音楽物かと思いきや,原作は立川志の輔の創作落語で,基本的にはコメディ作品です。
歓喜の歌といえば,ベートーヴェンの交響曲第九番の最終楽章で合唱される,クラッシクファンでない方でも良くご存知のあの歌のことですね。
私は,高校時代から現在まで,通算5回テナーパートの一員としてステージで歌った経験がありますが,毎回1年近くの練習を経て本番を迎え,3楽章までは暗く重い旋律をオーケストラの後ろで聞き,バリトンソロの“オーフロイデ”で導火線に火がつき,そして迎える歓喜の大合唱で感動はピークに達し,終演後はメンバーたちと手を取り合って涙した,それぞれの演奏会の記憶があります。
そんな“歓喜の歌”を題材にした作品ですからどんな内容でも見ないわけには参りません。
本作は,文化会館のダブルブッキング事件から巻き起こる騒動を,12月30日,31日の二日間の出来事に凝縮させ,要所に笑いどころを散りばめながら,最後にホロリと泣かせるというハートフルな作品に仕上げています。
本作で取り上げられる事件は当事者たちにとっては大変なことではありますが,人の生死に関わるような深刻なものではありませんから,しっかりと笑いの部分を堪能できますし,いろいろなトラブルを最終的には味方につけて,ラストの合唱の素晴らしさを際立たせた良作だと思います。
念のために申し上げておきますが,お役人の全部が飯塚主任(小林薫)のような方ではありませんし,本気で“おらが町の文化振興”に取り組む会館の主事さんもたくさん居られます。
文化会館の業務には,貸館業務と地域の文化振興業務があり,本作では前者を扱って笑わせていますが,大切なのは文化を育てる後者の方で,今回のトラブルを解決した背景には後者の調整能力が役立っています。
ところで,同じ原作をドラマ化した番組が,9月8日テレビ朝日系の全国ネットで放送されます。こちらのダメ公務員は佐野亮介主任(大泉洋)で,ママさんコーラスと市政20周年記念報告会をダブルブッキングしたという設定です。
映画が勝つか,ドラマが勝つか楽しみではありますね。
全ては原作、「志の輔らくご」の良さによるところが大!おすすめ度
★★★★★
コンテンポラリーの噺家、且つ「志の輔らくご」という現代に通用する落語およびその大衆向けエンターテインメントを落語家と庶民の両方の視点から創作、表現できる稀有のアーティスト、立川志の輔原作による新作落語の映画版。志の輔師匠本人によるパルコ劇場での落語版もDVD化されているので、できればそちらも同時に見て頂き、落語版と映画版の違いや面白さの表現方法の相違も味わって頂きたい。落語と映像は別物であり、基本的に2次元ピン芸を3次元的映像に翻訳し直す作業は想像以上に大変だったはず。まずは、その努力と映像版の出来の良さを評価したい。ただし、落語のギャグ(台詞)を映像の俳優にそっくりそのまましゃべらせた箇所が数箇所あり、あらかじめ落語でそのギャグを知っている者には、もう一捻りして欲しかったという欲もある。志の輔師匠、家元もチョイ役で出演。映像での成功の鍵はやはり志の輔らくごの本質が素晴らしいということに尽きる証明となったようだ。
落語と映画の取り合わせおすすめ度
★★★★☆
小林薫、安田成美、伊藤敦史、由紀さおり、浅田美代子など魅力的なキャスティングですし、他にも演技力のある光石研、でんでん、笹野高史、塩見三省、筒井道隆や、個性的な片桐はいり、根岸季衣、立川談志、渡辺美佐子、藤田弓子、リリー・フランキーという俳優人を集めています。原作が落語家の立川志の輔による新作落語ということですから、落語の面白さも画面や台詞から感じました。
「ダニーボーイ」の合唱とソロを歌った平澤由美さんの歌唱には感動しました。歌の持つ迫力、訴求力を感じるシーンで、感動から涙した瞬間でした。
この平澤由美さんは、東宝の『ミス・サイゴン』でジジ役をやっていたミュージカル女優なのですね。ソウルフルな歌声ですので、ゴスペル・シンガーかな、とも思いました。低音から高音へ地声で上っていく歌唱は、合唱特有のベルカントではないので余計に感心したわけなのですが。半端ではない歌唱力に圧倒されました。音楽として一番の聴きどころだったと思います。
安田祥子さんがアマチュア合唱団員としてでていましたが、それはそれでご愛嬌です。演奏曲目もトルコ行進曲でしたから。
エンディングのクレイジーケンバンドの「あの鐘を鳴らすのはあなた」は立派な歌唱でした。ただ、市井の女声合唱団を主題にしている訳ですから、女性ヴォーカリストに歌って欲しかった気がしました。
何度観ても面白いのは、まさに落語おすすめ度
★★★★★
まず、こういう映画にありがちな「感動させてやろう」「笑わせてやろう」という強引さを感じさせなかったのがいい。
なにより、キャラクターがしっかり確立されていること。いかにも公務員然とした事なかれ主義の主人公(小林薫)は、まったく悲壮感なしに、無責任男なりに責任を感じて奔走する。この、小林薫が演技賞ものの演技にあらためて関心しました。どう見てもダメ人間なのに、なんだか応援したくなってくるから面白い。彼は、家庭内の問題も抱えており、離婚の危機だったりしていているんですね。(笑) でも最後は、だらしないお父さんが、変身する!!
由紀さおりは、セレブ奥様たちを率いる、ベテランコーラスグループのリーダーで貫禄たっぷり、当然、歌もうまい。もう一方のグループは、根岸季衣や藤田弓子をはじめとするパートのおばちゃんや商店街の人々で、庶民的な味わいを醸し出す。リーダーは、元音楽の先生で、今は介護福祉士をやっているという奥さんを安田成美が好演。癒し系でいて頭の回転が良くてという儲け役ではあるのですが、久々映画に登場の安田成美がキュートに演じています。
オバサンコーラス軍団同士の折衝から、お互いの友情が生まれるのも、お約束の展開ながら面白い。クライマックスに向け映画は一気に感動的な物語へとなだれ込むのが心地いい。
強面の借金取り(でんでん)の無理難題や、立川志の輔本人の登場、コーラスグループによる泣かせるエピソード等、観客を飽きさせない工夫もされています。
個人的にウケたシーンを一つ。「袖をまつり縫いで、縫ってください」と言われた小林薫が「まつり縫いとは、ずいぶん陽気な縫い方だ」とボケるシーンに座布団一枚!
映画館で2度観ましたが、DVDが出たらまた観ようと思っています。
出来は非常に良いです。
おすすめ度 ★★★★★
背筋にゾゾゾという感覚が走りました
。ファンなら買って間違いなく損のない品ですね。
こつこつお金を貯めてでも買う価値のある一品だと思います!