恋人たちそれぞれのキスおすすめ度
★★★★★
吉田氏の作品にしては比較的あっさり描かれているこの作品。どこにでもある、高校生の恋愛模様がテーマだ。
しかし、そのあっさりした作風によって、中核をなす朋章と里伽子の恋が浮き彫りになっている。また、それにおおいに貢献しているのが鷺沢の視線である(彼もまた、朋章に恋をしているので、こう言っては申し訳ないのだけれど…)。非常に鋭い審美眼を持つ彼の存在なしでは、この物語は読者に伝わらなかったものがあっただろう。
それにしても、朋章と里伽子が本当の「恋」へと発展していく過程・セリフはなんとも印象的で美しい。昨今、巷に溢れている恋愛モノの少女漫画のような陳腐なものが一切見られないのだ。
「あたしは人の顔色うかがってばっかり 自分がいやでいやでたまらない…」
「…でもそういうこと 男じゃ埋められないだろ(中略)おまえが自分で決着つけなきゃならないことなんだ。どんなにつらくても」里伽子を後ろから抱き締める朋章。「でもこうしているとどんどんぬくもってくるだろ」――。
全編にわたって様々な登場人物の思いが交錯していながら、いわゆる「荒々しさ」がない。皆がそれぞれに胸の内に想いを秘め、恋は進んで、あるいは終わっていく。
読んでいる内、某作家が著作の中で書いていた言葉を思い出した。――人を愛するのは、いつだって海の近くなのだ――
ちなみに、この作品は各章の扉絵もシンプルかつエロティックでセンスが溢れている。表紙の装丁も最高。
まさに夢のコラボです。
おすすめ度 ★★★★★
今回の発売がすごく嬉しいです
。このアレンジが秀逸の一品から感じたことは、素晴らしい才能の奥深さ、ということです。
すばらしいものだと感じましたので☆5評価としました。