ふたりの奇跡おすすめ度
★★★★☆
夫婦の愛の物語である。だがそれは過去へさかのぼり、夫が独りで妻への、そして
妻からの愛を確認してゆく物語だ。
オランダへ旅行中の妻が突然死した。現実も未来も主人公・仁科を置いて
遠ざかっていく。定年後に二人で合奏しようと約束していた「愛の挨拶」。妻が
ヴァイオリン、仁科がピアノを弾いて楽しむはずだったのに……。
そのために通い始めた大人のピアノ教室が、はからずも仁科をかろうじて
支える役割を担う。
積極的にとまではいかないまでも、レッスンに通ううちに、こじんまりとした
クラスの人たちとの淡い交流が始まる。皆、それなりのわけがあっての教室通いだ。
そして、そのわけの裏には屈託がある。それぞれが煩雑な現実を生きる大人なのだ。
そして、ビルマ人の少女ザベーとの偶然の出会いとその後の関わりによって、
仁科はもちろんのこと、クラスの仲間が少しずつ変わり始める。
ビルマからの難民の現状を知るにいたって、自らを振り返らずにはいられなく
なるのだ。
それでもぐずぐずと、妻の死の状況に、どうしても拭いきれない感情をかぶせてしまい、
独りになると荒れる仁科が物語に翳りをつけ、さすが本岡類さんらしいひっぱりかたを
する。
わきあがる妻への思いに、読む私もふと心を揺さぶられていることに気づく。
愛の証はちゃんと残されていた。ラストシーンは美しい。
山崎努さんが。。。おすすめ度
★★★★☆
週刊文春の「読書日記」で俳優の山崎努さんが、えらく褒めていたので読んでみました。
結論は「なるほど、なるほど」
ただし、本の帯に書いてあったとおりの大人の純愛小説だと思って読むと、肩すかしされた感があるかも。
大人のピアノ教室が舞台で登場人物も多彩ですが、中でも「植草さん」がいかにもオッサンぽくって僕は好きです。
小説としてちょっとクササはありますが、とても良い話です。
僕も大人の音楽教室に通いたくなったなあ。
本気で泣きました。おすすめ度
★★★★★
大人のためのピアノ教室に集った男女5人の物語です。5人のうちでも、主人公となっているのは、定年を数年後に控えた証券マン。
退職後は奥さんのヴァイオリンと合奏しようという約束でピアノ教室に通っているんだけど、奥さんが海外で急死。さあ、これからの人生をどうする……というのが、メイン・ストーリーで、中年男性にとっては、身につまされるテーマなんだなあ。
しかし、驚いたのは、ビルマ(ミャンマー)難民の少女との交流が描かれている点。この小説が出たのと前後して、日本人カメラマンが取材中に射殺されたりして、ミャンマー問題が連日報道されるようになったのは、単なる偶然なのだろうか。日本にいるビルマ難民の姿もよく描かれてます。
ともあれ、登場人物も個性的だし、ストーリーも納得の充実度だけど、とくに素晴らしかったのは、ラストのシーン。私、本気で泣きました。
ここの部分だけでも、読む価値あり、ですね。
いい小説だなあと、読後感は秋にぴったりおすすめ度
★★★★★
本と言えば仕事関係の資料を読むことが多く、最近は小説をほとんど読まなくなっていたけれど、大人のピアノ教室が舞台になっていると知り手に取った。というのも最近ピアノを始めた友人がいて、結構、アフターで飲んだりしてるらしい。ふーん。で、読み始めたら大人同士の異業種交流的飲み会の場面も出てくるのだが、妻を亡くした主人公が救われていくストーリーに、ひさびさに小説の面白さを味わった。とにかく話がシンプルだし、脇役もいい。伝えたいことがはっきりしているのもいいと思う。ラストにかけては、じーんと感動が広がった。ちょっと男に都合よすぎる感じもするけれど、やっぱり男を救うのは妻の愛よねと妙に実感。読後感としては、淡すぎず、ちょっと寂しい秋晴れの午後という感じでしょうか。読んで損しない小説だと思う。
細部まで妥協なし
おすすめ度 ★★★★★
出来は非常に良いです。値段の割には上出来。
ご参考になれば幸いです。大変お勧めですよ!!